CTOメッセージ

社内外の多彩な人財が協創し
世界のイノベーションの中心に

倉田 英之 常務執行役員CTO/技術本部長

変化点が新たなビジネスチャンスを生み出す

倉田 英之 常務執行役員CTO/技術本部長
倉田 英之 常務執行役員CTO/技術本部長

我が国の産業史をひもとくと、市場や技術的な変化点に直面し、それを克服することで産業界全体が成長・飛躍してきたことがわかります。

AGCグループもまさにそのように新しい事業を生み出してきました。創業者である岩崎俊彌は、それまで幾多の実業家が挑戦し、ことごとく失敗してきた板ガラスの国産化に初めて成功し、ガラスメーカーとしての第一歩を踏み出しました。第一次世界大戦によって板ガラスの原料であるソーダ灰とガラス溶解に欠かせない耐熱れんがの輸入が途絶えると、それらの国産化に挑戦し、化学品事業とセラミックス事業の礎を築きました。

戦後に入っても、ブラウン管用ガラスバルブや自動車用加工ガラスの開発・製造を通して、産業界をリードするお客様とともに市場や技術の大きな変化を乗り越え、我が国の高度経済成長を支えました。

近いところでは、地上デジタル放送を契機にブラウン管からFPDへの歴史的転換を、それまで培ってきた技術を活用して、お客様とともに短期間に成し遂げました。このガラスのイノベーションはスマートフォンや半導体の分野の製品に引き継がれています。化学品事業でも、ガラスの原料であるソーダ灰の自給生産のため始めたソーダ灰製造を起点に塩素系誘導品、フッ素系誘導品へとケミカルチェーンを拡大して価値を付加していき、それが戦略事業の一つであるライフサイエンス分野へとつながっています。(参考:市場や技術の変化とAGCの革新 ↓
このように時代の大きな変化や困難に直面した時、AGCでは多様な人財が自律的に動き、課題に挑戦してきました。そのような人財が力となって新たな価値を生み出し、社会に貢献すること。それこそがAGCグループの伝統であり、強みであり、DNAです。

「両利きの経営」で持続的に成長する

これらを成し遂げ、新たな成長に挑戦する原動力が、AGCグループの「両利きの経営」です。これは、コア事業(既存事業)を深化させながら、戦略事業(新事業)の柱を探索する経営手法のことです。このうちコア事業においては、生産効率の追求と品質の向上、高付加価値化によってより多くのキャッシュを生み出すとともに、市場やお客様が次に何を狙っているのかをウォッチし、更にその先を予測して、対応した素材・ソリューションをタイムリーに提供していくことが必要です。また、戦略事業においては、世の中のニーズに応える革新的な製品によって新市場を開拓し、新事業を創出していくことが必要です。

こうして生み出した戦略事業をコア事業に成長させながら、さらに新しい事業を生み出すというサイクルを継続的に回していくこと、

それなしにAGCグループの成長はありません。そして、コア事業の強化においても戦略事業の創出においても、技術力がポイントとなります。

開発においても両利きのアプローチが重要

技術開発においても、両利きのアプローチが重要になります。AGCグループは、115年にわたる技術の蓄積と、多種多様な才能・技術を持つ人財の集合体です。長年にわたる技術・知見の蓄積と個々の技術者の力、これは組織能力と技術と言い換えても良いでしょう。

生産・基盤技術を革新し組織能力・技術を絶えず進化させること、そしてお客様と共に次世代新商品を創出していくのが、いわば右利きの開発です。一方、保有する技術を再定義し、これまでアプローチしていなかった新市場向け製品に拡張適用し、新たな市場を開拓していくのが左利きの開発と言えるでしょう。

これらの開発における両利きのアプローチを組み合わせ、繰り返すことで、時代の変化を乗り越え新しい成長の機会をつかんでいきます。

開発における両利きのアプローチ

最近のバイオテクノロジーを中心とするM&Aにも、それが当てはまります。AGCはもともとフッ素化学による低分子医農薬中間体・原体の技術や、そのビジネス展開の過程でGMP(医薬品適正製造基準)レベルの品質管理体制と設備を構築していました。また、酵母や大腸菌を使って有用タンパク質を製造するバイオ技術を開発保有しました。これらの組織能力と技術を活用して、医薬品メーカーからの微生物によるバイオ医薬品受託製造(CDMO)を行ったのが、いわば左利きの開発アプローチです。一方、それを起点に、M&Aも活用して動物細胞の技術を開発・導入し抗体医薬の分野に進んだのが、右利きの開発アプローチということになります。単に企業買収して事業をアドオンしたというわけではないのです。今後も、遺伝子治療技術(右利き)や新市場(左利き)に挑戦していきます。

バイオCDMO事業における両利きアプローチ例

今後の方向性

倉田 英之 常務執行役員CTO/技術本部長

現在の戦略事業分野(モビリティ、エレクトロニクス、ライフサイエンス)に続く次世代の新事業を考えたとき、キーワードの一つになるのは「サステナビリティ」(持続可能性)です。素材の会社AGCとして、素材イノベーションにより社会課題解決に貢献していかねばなりません。
次の中計ではエネルギー関連領域などで新しい事業領域を開拓していきます。自社の事業活動でのカーボン・ネットゼロを目指すとともに、世の中のネットゼロ実現への貢献を目指します。

ガラス溶解プロセスでは、エネルギー効率の高い酸素燃焼方式の導入や燃料使用量を低減する熔解用電気ブースターの導入などを加速します。また、断熱ガラスなどの製品により、世の中での使用段階のCO2削減に貢献します。更には、燃料電池用フッ素系電解質ポリマーなどにより、水素、再生可能エネルギーなど次世代エネルギーの普及に貢献する製品の開発を進めます。
また、DXの加速による競争力の強化も次の中計の柱の一つです。最新のデジタル技術を活用しビジネスプロセス毎の取り組みを進化・深化させ、複合的なビジネスプロセスのデジタル化を推進します。また、高度なデータ解析スキルを併せ持つ人財の育成や、バックオフィス業務を含めたあらゆる面での標準化・効率化を進めていきます。
今、世の中はかつてないスピードで変化しています。化石燃料から再生可能エネルギーへの移行、CASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)に象徴される自動車産業の変革、5Gによる高速通信化、次世代半導体の加速など、これまでにないほど多くの、そして大きな変化点が同時に起きています。AGCグループにとって、自分たちの強みを発揮するまたとないチャンスととらえ、挑戦していきたいと思います。

YTCを世界のイノベーションの中心に

2021年6月にAGC横浜テクニカルセンター(YTC)がフルオープンします。従来、商品開発を担ってきた中央研究所(横浜市神奈川区羽沢町)を、生産技術開発を担ってきた旧京浜工場(横浜市鶴見区)に移設し、分かれていた商品開発機能や生産技術開発機能が統合されます。これにより、素材開発→プロセス開発→設備技術開発をシームレスにつなぐ体制が整うことになります。その狙いは次の二つに集約されます。

一つは、常に最終製品の形を意識しながら素材開発を行うことにより、研究開発のスピードを大幅に上げること。二つ目は、社内の各部門や社外のお客様、パートナー企業、アカデミアなどとの協創(コラボレーション)によって、新領域の開拓と新たな価値創造を実現することです。

AGC横浜テクニカルセンター(YTC)前に立つ倉田

AGCグループの技術力の源泉は「人」です。さまざまな国籍、経歴、性別の人がYTCに集い、アイデアを出し合い、協力することによって、AGCグループの技術力はさらに強化・進化されると確信しています。
私が特に期待しているのは、社員だけでなく社外の人も含めて多彩な人たちがYTCに集い、交わることによって化学反応が起こり、新たな発想が生まれることです。こうした横断的な異種混合による取り組みによって、画期的なイノベーションが生まれることを大いに期待しています。そして、そのアイデアを様々なスペシャリストが共同して素早くビジネス化していきます。YTCではすでにいくつかのプロジェクトが動き出しています。その中には社外の人が参加するプロジェクトもあります。

倉田 英之 常務執行役員CTO/技術本部長

このように、さまざまな部門・分野の人が集まって協創しながら新しい価値を生み出していく。そんなダイナミックな姿をイメージしています。
もちろん全てのプロジェクトが成功するわけではありません。しかし、それは失敗ではなく、技術の引き出しが増え、関わった人財が成長することを意味します。また、たとえすぐにうまくいかなくても、将来につながり、世の中を変えるような夢のあるテーマに強い信念を持っている研究者がいたら、背中を押してあげたいと思います。

YTCは、そんな想いと熱意のある人財が伸び伸びと仕事ができる、懐の深い場でありたいと思っています。そこで働くAGCの人財がお客様を惹きつけ、YTCに行けば必ず解が見つかると思ってもらえるような、世界のイノベーションの中心になることが、CTOである私の夢です。

参考:市場や技術の変化とAGCの革新

社会の発展を支え、時代を切り拓き続けた新事業

ガラス事業の事例

地上デジタル放送を契機にブラウン管テレビから液晶テレビ(LCD)などのFPD(フラット・パネル・ディスプレイ)へ一斉に切り替わったときも、AGCグループはそれまで培ってきたガラス組成技術、ガラス溶解技術、フロート成形技術を活用して新たなLCD用無アルカリガラス基板を開発製造し、お客様とともにブラウン管からFPDへの歴史的転換を短期間に成し遂げました。その技術革新の流れは、姿を変えてスマートフォン用の化学強化ガラスや車載内装用カバーガラスなどへと、今でも進化を続けています。

ガラス事業における両利きアプローチ例

化学品事業の事例

ガラスの原料であるソーダ灰の自給生産のため始めたアンモニア法によるAGCのソーダ灰製造は、日本初のアンモニア・ソーダ事業となりました。また、AGCの苛性ソーダの事業はアンモニア法から始まりましたが、塩安肥料市場の盛衰、そして塩ビ市場の拡大、環境問題などの時代背景を受け、その後、水銀法から隔膜法を経て、高品位のイオン交換膜法電解へと大幅な製法転換を成し遂げてきました。現在では日本国内の苛性ソーダの製造法は100%イオン交換膜法に転換され、AGCをはじめとする日本企業が開発した技術は世界で広く利用されています。AGCは、これらの技術革新を通じて、塩素系誘導品、フッ素系誘導品へとケミカルチェーンを拡大して価値を付加していき、今ではフッ素系樹脂や医農薬中間体・原体の分野で確固とした地位を築いています。また、この過程で厳しい品質保証体制を確立し、それが戦略事業の一つであるライフサイエンス分野へとつながっています。