AGC Hub

Society

技術が支える珊瑚礁保全活動と“人と環境との関わり”

碧い海を守るために立ち上がった合同プロジェクト

美しいビーチを求めて多くの観光客が訪れる東南アジアは、近年、海洋汚染の問題に直面しています。とりわけ海洋汚染によって引き起こされる珊瑚礁の衰退は深刻です。海洋生物の生息地や産卵場所である珊瑚礁は、豊かな海洋環境を築く上で欠かせません。

問題解決に向けて、AGCグループはタイとインドネシアで珊瑚礁再生の取り組みを進めています。

インドネシアに拠点を置く、AGCグループのアサヒマス・ケミカル社(ASC)は、同国の独立行政法人の生物多様性団体KEHATIと協業し、2016年からインドネシアのサンギャン島における珊瑚礁の再生プロジェクトを展開してきました。今回はインドネシアで行っている環境保全の取組みに焦点を当ててご紹介します。

海洋汚染で揺らぐサンギャン島の人々の暮らし

ジャワ島とスマトラ島の中間に位置するサンギャン島は、インドネシアの海洋保護区に指定されています。ダイビングやシュノーケリングのスポットとしても知られ、島民の多くは漁業や観光業を生業としてきました。観光用ボートや宿泊施設、土産物屋、コーヒーショップの経営など、観光客向けの商売で生計を立てる地元住民も少なくありません。

しかし近年、珊瑚礁の破壊によって漁獲量が減り、地元の漁師は満足な収入を得られなくなってきました。島を訪れる観光客の足も遠のき、地元経済は二本柱が崩れてしまう危機に陥っています。

ASCのポリ塩化ビニルを珊瑚の培地に応用

サンギャン島に珊瑚礁を取り戻すために、ASCは地域の珊瑚礁再生プロジェクトに参画しました。自社で製造するポリ塩化ビニル(PVC)を用いて培養容器をつくり、海底に設置することで珊瑚の育成を進めています。

PVCは水道管や日用品、電子機器など、多様な用途で使われている汎用的な素材。軽量かつ耐久性に優れ、加工や設置も容易です。珊瑚礁の育成で一般的に用いられるセメント基質に比べ、PVCは安価に手に入るため、より安価に珊瑚の育成を行うことができるのもメリットのひとつです。

珊瑚礁の成長と共に“海を守る”意識を育む

直近8ヶ月間の計測データによると、PVC製培養器で育成した珊瑚の苗は通常よりも短期間で成長。またプロジェクトを始めた2016年以前は見られなかった種類の魚の姿が観察されるなど、サンギャン島付近の海は着実に変化を遂げています。

ダイビングやシュノーケリングを目的にサンギャン島を訪れる観光客も、1週間に60〜70人程度から100人と約40%増加し、観光客向けのビジネスも好転しつつあります。

島で暮らす漁師たちの意識にも変化が現れました。珊瑚礁再生プロジェクトを知った漁師たちが珊瑚礁を守る活動を始めたのです。ダイナマイト漁をやめ、錨(いかり)を下す際も珊瑚礁を避ける等、漁師たちの間で自然保護の動きが広がっています。珊瑚礁を守るための小さな行動が積み重なり、海洋環境が改善された結果、再生プロジェクトの対象地域は豊かな漁場となっています。

今後も継続して珊瑚礁を再生することで、自然環境を持続的に保全するだけでなく、地域の漁業と観光業の活性化にも貢献し、地元住民は安心して島の暮らしを送れるようになるでしょう。

サンギャン島の漁師が海との向き合い方を変えたように、環境課題への取り組みは人が自然との関係を見つめ直す機会をもたらしてくれます。タイやインドネシアで進めている珊瑚礁再生活動。AGCは今後も自然と人が共生する未来づくりを確かな技術によって支えていきます。