CTOメッセージ

イノベーションを起こし続ける
AGC

専務執行役員CTO技術本部長 平井良典

技術にこだわり、ビッグチャレンジを行ってきたAGC

専務執行役員CTO技術本部長 平井良典
専務執行役員CTO技術本部長 平井良典

AGCの110年を超える歴史を振り返ると、世の中が必要とするもの、お客様が期待するものを提供するために、ビッグチャレンジを何度も行ってきたことがわかります。

最初のチャレンジは、言うまでもなく板ガラスの製造でした。明治維新から30年以上にわたって、数多くの事業家が板ガラスの製造を試みたものの、ことごとく失敗に終わり、板ガラスの国産化は不可能と考えられていました。この「常識」に果敢に挑んだのが、創業者の岩崎俊彌です。若くしてロンドンに留学し応用化学を学んだ俊彌は、技術こそが競争力の源泉であり、欧米先進国の技術を取り入れ活用することが、我が国産業の発展には欠かせないと考えました。
その思いを胸に創意工夫を重ねた末に、わが国で初めて板ガラスの製造に成功したのです。その後も、海外からの輸入に頼っていたソーダ灰や耐熱煉瓦の国産化を成し遂げ、それが今日の化学品事業やセラミックス事業につながっています。

これらの技術は、最初は海外から導入されたものではありましたが、それを深化させていく過程でAGCオリジナルの技術となり、同時に、量産化のための生産技術が蓄積されていきました。その繰り返しによって、ガラス・電子・化学品・セラミックスにまたがる、世界でも類を見ないAGC独自のコア技術が育まれ、技術開発にこだわる企業文化が醸成されていったのだと思います。

当時の板ガラス製造の様子当時の板ガラス製造の様子
テレビの普及と歩調を合わせて管球ガラス(ブラウン管)事業が伸長
テレビの普及と歩調を合わせて管球ガラス(ブラウン管)事業が伸長

その技術は戦後になって大きく花開きました。モータリゼーションの波に乗って自動車用ガラス事業が拡大し、テレビの普及に合わせて管球ガラス(ブラウン管)事業が伸長しました。また、化学品事業においても、公害問題を契機に、海外から導入した水銀法に替わって登場した電解法とそこに使われる電解膜を開発。さらに、電解法によってつくられた塩素を原料とするフッ素化学事業が生まれました。

ディスプレイ用ガラス基板 AN100/エイエヌ100
ディスプレイ用ガラス基板 AN100/エイエヌ100

その流れは、更に大きくなって現在へと続いています。液晶テレビに必要な無アルカリガラスはフロート法ではつくれないというのがそれまでの常識でした。AGCはこの無謀とも言える技術開発にチャレンジし、十数年をかけてオリジナルのフロート技術と研磨技術の開発に成功しました。それにより生み出された製品「AN100」によって、今では世界第二位のTFT用ガラス基板メーカーへと成長しています。

また、化学品のコア技術であるフッ素化学技術を進化させることによって医農薬原体・中間体ビジネスへと進出。さらに、1985年に酵母の培養からスタートしたバイオ技術は、CDMO(受託開発製造)ビジネスへとつながっています。

このように、何よりも技術にこだわり、その技術によって生み出された製品と、それをつくり出すための高度な生産技術こそが、AGCの強みにほかなりません。

多様な技術をもとにお客様ニーズに素早く対応

ひと口に技術開発と言っても、短期的な視点で行う商品開発と、中長期的な視点で取り組む基盤技術開発に大別され、それらが両輪となって初めて、企業の持続的な成長が可能となります。ただ、私は、短期的な開発を行っているからこそ、将来(中長期)の技術動向が見通せると考えています。つまり、ロードマップに沿って短期的な視点を徐々に伸ばしながら開発を進めていった先に将来が見えてくるということです。

短期的な開発を行う上で、AGCの強みは二つあります。

一つは、多様な技術を持っていることです。その技術プラットフォームによって技術を組み合わせ、新たな機能、価値を生み出せることがAGCの大きな強みです。

二つめは、各業界のリーディングカンパニーとの間に構築した強固な関係です。お客様企業が新しい商品を検討しようとしたとき、最初にAGCに声をかけていただくことが、開発を行う上で大きなアドバンテージとなります。ただし、その要請に素早く応えるためには、ある程度将来を予見した上で、さまざまな技術を準備しておくことが必要です。お客様に言われてから開発を始めたのでは間に合わないからです。そのため、私は常々、社員に対して「技術の引き出しを持とう」と言っています。

コーティング技術の一つ、スパッタリング法による成膜の様子
コーティング技術の一つ、スパッタリング法による成膜の様子。

一例をあげると、AGCでは中長期視点に立って1970年代からコーティング技術を開発してきました。これにより、ガラスの素板をつくるだけでなく、ガラスにさまざまな表面処理を施すことによって、建築用ガラスや自動車用ガラスの高機能化が可能となりました。また、前述のように30年ほど前からバイオテクノロジーの基礎研究を行っており、それが現在のライフサイエンス事業の礎となっています。

ここで特筆すべきは、20年後、30年後に求められる技術領域に一旦ターゲットを定めたら、たとえ利益が出なくても我慢して研究を継続するという企業姿勢です。

その典型例がTFT用ガラス基板の開発で、当初は苦難の連続であり、しかも、液晶テレビがブラウン管に取って代わるという保証はありませんでした。それでも開発を続行し、やり遂げたからこそ、のちに莫大な利益を上げる事業へと成長することができたのです。

ポイントは「複合化」と「オープンイノベーション」

21世紀は、20世紀に比べて時間軸が半分以下になっています。それだけ変化のスピードが速くなり、将来を見通すことが難しくなってきているということです。これへの対応策は二つあります。

一つは、すでにある技術の「複合化」です。例えば化学品はさまざまな材料を持っていますが、それだけでは実際の応用ビジネスにつながりません。しかし、AGCには建築用ガラス、自動車用ガラス、電子などの多彩な事業があります。化学品の材料をそれらと組み合わせ複合化することで、これまでにない新たな機能を持った部材をつくることができます。

二つめは、オープンイノベーションです。これには、大学との連携、お客様企業との共同開発、スタートアップ企業への出資、M&Aなどさまざまな形がありますが、いずれにしても、外部の技術、知恵、アイデア等を積極的に取り入れることによって、開発を加速することが可能となります。

AGC Biologics

その成功例がCMCの買収です。これによりAGCは動物細胞の培養技術を手に入れたばかりか、CMCの持つ欧米マーケットを囲い込むことができました。また、お客様との共同開発も成功確率の高い方法です。なぜなら、開発に成功すれば、必ずその材料をお客様に使ってもらえるからです。

「協創空間構築プロジェクト」のもと、京浜工場内に新しくつくる研究開発棟も、まさにオープンイノベーションを指向しています。この新しい研究開発拠点は、外部との「協創」だけでなく、社内のオープンイノベーションを促進することも狙っています。これまで、基礎研究、商品開発、プロセス開発、設備開発を行う場所は分散しており、それぞれの交流は活発ではありませんでした。これらをシームレスにつなげ、開発の初期段階から各部門が連携・連動することによって、複合化と開発スピードを加速させることが、このプロジェクトの目的です。

京浜工場内に新研究開発棟(イメージ)新研究開発棟(イメージ)

こうしたオープンイノベーションの方針は、国内だけでなくグローバルにもあてはまります。すでにシリコンバレーに新規事業開拓のための分室を設け、従来から行っている技術探索だけでなく、スタートアップ企業やお客様企業の技術情報とニーズを取り入れながら事業化を目指す機能を強化しています。また、米国のシアトルにバイオ事業の本社を設置し、世界最先端のビジネスに対応していくことにしています。このほか、今後は欧州、シンガポール、中国にもイノベーション拠点を設け、日本を含めてよりグローバルな研究開発体制を構築していく方針です。この中でも中国は、すでに特許出願件数が世界トップとなり、これまでの「世界の工場」「世界の消費地」という位置づけから、「イノベーション大国」へと発展していくはずです。そうした動きと並行して、人財のグローバル化も図り、現地の優秀なスタッフを積極的に採用していく考えです。

このように、私はCTOに就任して以来、「脱自前主義」を打ち出して、オープンイノベーションの必要性を強調してきました。3年がたち、それがようやく目に見える形になりつつあるという手応えを感じています。

とはいえ、オープンイノベーションは何でもオープンにするということではなく、実は「オープン&クローズ」戦略です。開示できる部分はどんどんオープンにする一方で、コア技術についてはクローズにして守る、というのが基本的な考え方です。強いクローズ技術を持ちつつ、外部からいろいろな知恵をオープンに集め新しい結合をつくることが、オープンイノベーションのイメージです。

ガラスは一等地。
ビジネスチャンスは無数にある

Mobility

Mobility

Electoronics

Electoronics

Life Science

Life Science

AGCは「2025年のありたい姿」に向けて、モビリティ、エレクトロニクス、ライフサイエンスの3戦略事業に注力し、これらの営業利益の構成比を2020年に25%、2025年に40%以上にすることを目指しています。かなり高い目標ではありますが、AGCは過去からこの分野を伸ばすための取り組みを進めており、十分に実現可能な数字だと思っています。

その中でもモビリティは、電気自動車や燃料電池車への移行、自動運転・コネクティビティ技術の進化など、今まさに大きな変化が起きている分野です。これに伴って、ガラスは単に内と外を隔てる素材ではなく、エレクトロニクスや化学素材と融合することによって、表示、センシング、通信のすべての機能を担う部材として、不可欠なものとなりつつあります。すでにAGCは、高精細な表示用基板ガラス、クルマの内装用ガラス、ガラスアンテナの分野で世界トップの技術と製品を持っており、これらを組み合わせることによってクルマの進化を側面から支えていけると確信しております。これらがクルマに搭載されることによって、近い将来、クルマは走るモバイルデバイスとなり、誰もが気軽にクルマを使って移動・通信する時代が到来すると思います。

クルマに限らず、ガラスは人間の目線に最も近い位置にあります。例えば銀座の街を歩いたとき、目に見えるもので最も多いのはガラスです。それに気づかない人が多いのは、あまりにもガラスが私たちの暮らしと一体化しているからです。このように、ビジネスにおいてガラスは一等地であり、今後チャンスは増える一方だと思います。

創業者をはじめ、幾多の先人がそうであったように、我々もそこに果敢にチャレンジし、イノベーションを起こし続けたいと思います。